サザエさんの家族は父の波平さん、母のフネさん、弟のカツオくん、妹のワカメちゃん、そして夫のマスオさんに息子のタラちゃん、ペットの猫タマを加えて全部で7人家族と1匹というのが常識です。
けれども実は「ヒトデちゃん」という家族が過去に登場したことがあったのです。
今回はその幻の家族ヒトデちゃんについてご紹介します。
ヒトデちゃんは1954年に文芸春秋社より発刊された「漫画読本」の創刊号に掲載された一コマ漫画「サザエさん一家の未来予想図」に登場します。
この漫画は当時から10年後のサザエさん一家が「弾丸道路」の建設によって立ち退いてしまった、かつての家があった場所を訪ねる場面となっており、タマを除く家族全員が10個歳を取った状態で登場します。
けれども左下を見るとワカメちゃんと同じ髪型をした小さな女の子がいて、マスオさんがその子に向かって「ヒトデ」と呼びかけています。
ワカメちゃんは成長して波平さんやフネさんよりも背が高くなり髪型も変わっているので、この女の子はまったく別のキャラクターであることが分かります。
サザエさん一家の未来を描いた漫画は他にも同じ1954年の「漫画読本」創刊号に掲載された「サザエさん30年後」と、1966年に当時4コマ漫画「サザエさん」を連載していた朝日新聞で企画された「サザエさん一家がひとなみに年をとっていたら……」の二つがあります。
このうち「サザエさん30年後」についてはサザエさんの子供たちとして成長したタラちゃんなど4人が登場しますが、そのうち若き日のサザエさんに似た女性が大人になったヒトデちゃんと考えられます。
一方、連載開始から20周年を記念した「サザエさん一家がひとなみに年をとっていたら……」で描かれている20年後のサザエさん一家にはヒトデちゃんが見当たりません。
おそらく作者の長谷川町子さんが長く登場させる機会が無いまま、存在を忘れてしまったのでしょう。
ヒトデちゃんが登場してから12年も経っているので無理もありません。
サザエさんは漫画でもアニメでも基本的には最初の設定のまま歳を取ることはありません。
ですからアニメの場合、放送開始から40年以上経っていてもサザエさんは24歳のままですし、タラちゃんも3歳のままです。
時代に合わせて家具家電が変わったり、当時の流行が反映されたり、アニメオリジナルのキャラクターも随時登場しますが、主な人物の設定はずっと変わっていません。
仮にヒトデちゃんがタラちゃんよりも8つくらい年下だったとすると、登場させるには全員それだけ歳を取らせなければいけません。
アニメの場合、カツオくんは大学生、ワカメちゃんは高校生になり、大幅に設定が変わってしまいます。
主なキャラクターの年齢が固定されている以上、ヒトデちゃんが登場することはできないのです。
アニメのサザエさんしか知らないファンには衝撃的かもしれませんが、こうしてヒトデちゃんは60年以上前の漫画に確かに存在していたのです。
設定上、今後もアニメで登場することは無いかもしれませんが、例えば読売新聞に連載されている「コボちゃん」のように途中でタラちゃんの妹として登場していたら、また今のサザエさんの展開も変わっていたのかもしれません。
ヒトデちゃんはそんな想像を駆り立ててくれるキャラクターなのです。